いよいよベトナム旅の最終日 ? 午前中はホテルのプールサイドで ゆっくり読書をして過ごした ? 私はプカプカと身体を浮かべて 吹き抜けの青空を眺める ? これ以上ない贅沢を 全身で堪能していた  一転して午後 私たちはタクシーを手配し ベトナム戦争証跡博物館へ向かった  屋外には アメリカ軍の戦闘機や戦車などが ゴロゴロと展示されていた ? 興味深そうに見入る人たちを横目に ひと通りに一瞥をくれて 私達は涼しい館内へ滑り込んだ ? その数秒後 得も言われぬ表情をした女性の写真が視界に飛び込んで来た ? 私の両目から ポロポロと流れ落ちる涙の粒を 後から湧き上がる感情が 追いかけてきた ? それなりに 長いこと生きているが 人間のあのような表情を 見たことがない 絶望、怒り、空虚 私の乏しい語彙では 到底表現出来ない何かが そこにあった ? 展示物を見進めるうちに グチャグチャな感情が押し寄せる 資本主義の暴走 アメリカへの嫌悪感 枯葉剤の被害者を 見世物みたいに消費している自分 ? 怒りの矛先がクルクルと変わる ? さらに足を進めると 目の前はフォトグラファーの レクイエムコーナーになった ? 撮影した写真家も記者たちも 命懸けでこの地獄を伝えたのだ ? そしてさらに進むと アメリカ兵の被害者の展示がある ? この人たちも犠牲者なのだ ? ?敵も、味方も、伝える側も 巨大な渦の中で うねり重なり合っている ? 多くの西洋人らしき若い人たちが 展示物の説明を丁寧に読んでいる もしかしたらこの人たちは 他人事ではない地域の人 なのかもしれない ? ?博物館を出て スマホでタクシーを呼ぶ ? ?異国の地で 道案内をしてくれるGPSも 世界と繋がる通信システムも 戦争や軍事開発の歴史のなかで 生まれ、洗練されてきたものだ ? ?戦争がもたらした便利なものが 私たちの暮らしにはいくつもある ? あの凄惨な過去の グラデーションの上に 私たちの快適な今がある ? ?窓の外を流れる ホーチミンの街並みを眺めながら 割り切れない思いが胸を締め付ける ? どんなに 便利な世の中になったとしても 誰かが 言葉を失うほどの苦しみを 味わうくらいなら あの写真の女性のような表情を 誰かにさせてしまうくらいなら 私は 多少不便になったとしても 人が苦しまない世界の方がいい ? そう思いながら 私は次の映えスポットへと到着した 
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